071874 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

BONDS~絆~

BONDS~絆~

本音

ハート(白)

菘に嫉妬する気持ちも有りながらどこかで諦めていた。だから俺は今家にいるんだと思う。会った時の楓の姿、声、全てを記憶してしまった今、とても哀しすぎて哀しいという表現じゃ足りない。日曜に楓に会うのが憂鬱だった。昨日の記憶はあまりない。当たり前のことだけどずっと、菘より楓の側にいた俺より菘を頼られるのが悔しかった。昨晩、楓が家に来た。孤独を感じた後だったから、俺が出るわけもなく、子供っぽいかなと思いつつ俺の気持ちを知っていて無意識にあんな声で菘と話す楓に嫉妬した。電話していた時微かに聞こえた。
「まだ話していない」
とはどういうことなんだろう?・・・それすらも教えてくれない楓は俺の思いをどう受け止め、この先どう接してくるのか・・・もう何も考えたくなかった。考えれば考えるほど孤独を感じるからだ。
翌日、菘に何か伝えたいこともないと思い学校をサボった。すると先生から電話が来て菘知らないか?と聞かれた。知らないと答え、また孤独になった。皆して俺より菘を選ぶのかよと思うと更にマイナス思考になるのだ。
そして日曜がやってきた。行きたくないとは思いつつもいかないことでまた自分を責めてしまう楓を見るのは嫌だったから行くことにした。もう人に好かれることは望まない。嫌われないように生きよう。とココ数日思ってきた。約束の公園に行くと、楓と菘がいた。
「あぁ、きた」
どうして菘がいるんだ?いらつきながらも反応を示した。
「あぁ」
「じゃあちゃんと話すんだぞ」
「うん。アリガトウね」
「何もだよ」
そう言い、菘は帰って行った。
「あ。菘今日この為に学校休んだのか?」
「そうだよ。そいつが全部話すだろうから・・・じゃあな」
そう言い帰って行った。
「座ろうか」
「うん」
ベンチに座り少しの静寂の後楓が話し始めた。
「御免ね」
「何が?」
「今から話すことについて・・・」
「うん」
俺は頷いた後、何を言われても驚かないと覚悟を決めた。
「昨日携帯アリガトウ。菘と話せて良かった。ずっと避けられていたから」
「どうして?」
「私と菘が付き合うようになったのは私が菘に告白したからなの。最初は菘断ったの。俺よりお前のこと思ってくれているヤツいるから御免って。菘は俺の気持ちよりそいつの気持ちを大事にしてやってくれって言ったわ。だけど私も菘のこと好きだったし諦められなかったの。そんなとき私に留学の話が来たの。想いが報われないままロンドンに行くのは淋しすぎるって菘にもう一度告白したの。そうしたら留学に行くまでなら良いよって言ってくれたの。たった2週間だけだったけど幸せだったわ。」
そう言い楓は思い出の世界へ一人入っていった。誰かに話しているというよりは独り言をささやいている感じだった。少ししてからこっちの世界に戻ってきた。
「あっ!御免!こんな話したかったんじゃないの・・・」
「うん」
あれこれ菘は何処行って何して・・・という内容は俺に対する嫌味だろうかとさえ思わされた。だから謝ってくれたのは良かった。でなければ、頷きすらしなかっただろう。
「貴方が私を好きだって言ってくれたの嬉しかった。本当純粋に。菘もそうだったのかなって思ったわ」
「菘の話はもうやめよう」
俺の告白に対する言葉を述べている時に菘の名前を出してほしくなった。
「でも菘の話をしないと貴方に話す内容が伝わらないわ」
楓は自分の意見を言い、話を続けた。
「そしてロンドンにいても、やっぱり菘のことばかり考えていたの。勿論、約束通り出発の前夜に別れたわ。・・・だけど忘れられなかったの。ずっと好きだった」
少し間を開けてハッキリとした口調で、だけど何処か照れくさそうに言った。
「今も」と。
「話がずれてきている、今も避けられているのか?」
「今は前よりは普段通りになったけど、貴方に告白されて断った話したら、また避けられちゃった」
「そっか、御免」
俺が悪い訳じゃないのに何故か告白をしたことで楓を不幸にしてしまったような気がした。
「違うの!そういう意味じゃなくて・・・御免ね?ハッキリ言うね」
「うん」
ここからだと僕は口の中にあった水分を全て胃の中へ押し飲んだ。
「私やっぱり菘が好きだから、貴方とはつきあえません」
「うん」
俺は無意識に両手を顔で覆った。
「ないているの?ハッキリ言い過ぎた?御免ね・・・」
「違うよ。良かった・・・」
「え?何が?」
「楓がそんな中途半端な気持ちで俺とつきあおうなんて言わないでくれて・・・本当良かった。本当に勝手だし、何もしてやれないけど楓が菘ともう一度やり直せるように祈っていていいかな」
「・・・うんっ」
楓の頬につーっと涙が流れた。夕暮れのオレンジを背景に逆光の涙が俺を一瞬迷わせた。だけどもう迷わないよ。君は答えをくれた。それだけで俺は充分だから。結果がどうであれ俺は返事が欲しかったんだ。だからこんなにも心が清清しいんだ。もう迷わないよう。純粋に有難う。


協力へ

ホームへ



© Rakuten Group, Inc.
X